このページでは、香典返しの際に知っておきたい「一般的なマナー」を紹介しています。時期、相場、品物から地域別などで詳しく解説。日頃ご経験の無い弔事の作法についてしっかり理解しておきましょう。
香典返しのマナーや作法
このページでは、香典返しの際に知っておきたい「一般的なマナー」を紹介しています。時期、相場、品物から地域別などで詳しく解説。日頃ご経験の無い弔事の作法についてしっかり理解しておきましょう。
香典返しをする時期
香典返しは、お通夜や葬儀へ参列しお供えを頂いた方への感謝の気持ちと共に、弔事を滞りなく済ませることが出来た報告をするという意味合いも持っています。従って、忌が明けて四十九日の法要を済ませたタイミングで挨拶状を添えて香典返しを贈り、法要が無事に済んだ報告をするのが一般的なマナーだと言えるでしょう。
具体的には、忌明け法要後から2週間以内に相手に届くように手配するのが理想です。忌明けまでに年を越してしまう場合などは命日から35日目を忌明けとして香典返しを贈る場合もあります。
神式の場合は三十日祭もしくは五十日祭が終わった後、キリスト教であれば死後30日目の追悼ミサ(カトリック)や死後1か月目の召天記念日(プロテスタント)の後で贈る、というように宗教によっても多少タイミングが異なります。
現在では通夜や葬儀の当日にお渡しする「当日返し」という習慣も増えていますので覚えておきましょう。
香典返しの金額の相場は?
「香典返しは半返しが基本」と耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。確かに香典返しは頂いた香典の半分の額をお返しするのが一般的なマナーだと言われており、決して間違いではありません。
ただし、状況によっては半返しがふさわしくないこともあるので注意が必要です。例えば、親族や身内から高額な香典を頂いた場合、多くの場合は「葬儀の足しにしてほしい」という気持ちが込められています。
このような場合は相場通りの半返しよりも、相手のご厚意に甘えて3分の1~4分の1程度にとどめておいた方が良いでしょう。一家の働き手が亡くなった場合や子供が未成年の場合も同様に3分の1~4分の1、もしくは香典返しをする必要はないとされています。
また、弔事に関わるマナーは親族や地域によって大きく変わってくるものです。地域によっては3分の1が相場とされていることもありますので、事前に確認しておくことも大切です。
熨斗(掛け紙)のマナー
香典返しの品物に熨斗紙(掛け紙)をかけて贈るのは基本的なマナーですが、他にも熨斗紙に関するマナーがありますので押さえておきましょう。まずは熨斗紙の選び方です。香典返しは弔事ですので、黒白、もしくは黄白の結び切りの水引を選びます。
蓮の花が書かれた掛け紙もありますが、これは仏式の葬儀でのみ使われるものですので、他宗教の場合は使用しないように気をつけましょう。香典返しの表書きで最も一般的なのは「志」です。他にも「満中陰志」「粗供養」「偲び草」「茶の子」など地域、宗教によって様々な表書きがあります。
「志」は宗教を問わず使用できますので、迷った場合はこちらにしておくのが無難でしょう。忌が明けてから贈る香典返しは濃墨の毛筆で書くのが通例ですが、地域によっては薄墨を使用する場合もあるようです。
香典返しに適した品物は?
香典返しは、不祝儀を後に残さないという考えから「後に残らないもの」が好ましいとされています。お茶やコーヒー、海苔、お菓子などのように食べたら無くなる食品類や、石鹸、洗剤などの消耗品が定番の品物と言えるでしょう。
ただし、肉や魚などの生もの、慶事に使われる鰹節や昆布、お酒などの嗜好品は香典返しではタブーとされていますので気を付けて下さい。他には、「故人が土に帰る」という意味から陶磁器、「不幸を塗りつぶす」という意味から漆器も香典返しによく使われる品物です。
近年では昔からの慣習よりも、贈った相手を困らせず、喜んでもらう事を重視する傾向があります。日持ちのしない食品類やかさばるようなものは避けられ、カタログギフトのように失敗の少ないものが選ばれるようになっています。
即日返し(当日返し)について
香典返しは四十九日法要を済ませた忌明け後に贈るのが通例とされていますが、忌明けを待たず、通夜や葬儀の当日に香典返しを渡す場合もあります。これは「即日返し」(即返し・当日返し)と呼ばれています。
以前は一部の地域で行われていた習慣ですが、近年はこの「即日返し」を採用するケースが増えてきています。即日返しには、香典の額の多少にかかわらず一律同じ香典返しをお渡しすることで、送り先住所の管理や品物をそれぞれ選ぶ負担を軽減できるというメリットがあります。
即日返しの品物の金額相場は2~3000円とされています。ただし、高額な香典(1~2万円以上)を頂いた場合は忌明け後、個別に改めてお礼の品物を贈り、半返しにするのがマナーとされています。
商品券はマナーに反する?
香典返しの品物は、食品類や消耗品などの「消えもの」が昔からの定番でした。しかし近年では贈った相手を困らせず、喜んでもらえるものを選びたいという考えから「金券・商品券」を香典返しの品物に選ぼうと考える方も少なくないようです。
結論から言うと、香典返しに商品券を贈るのはマナー違反ではありません。ただし、商品券は金額が明確に見えてしまうため、「お金・現金と同じようなもの」と考える人もいますので注意が必要です。
特に目上の人に対して現金を贈るのはマナー違反とされていますので、商品券を贈ったとしても「現金で返すなんて非常識で失礼」と捉えられてしまうことも無いとは言い切れません。香典返しに商品券を贈る場合は親しい間柄の人にとどめ、昔からの慣習を重んじる年配の方や立場が上の人へは避けておいた方が無難と言えるでしょう。
どうしても悩んでしまう場合は商品券に品物を添えて贈ってみたり、目上の方へは金額が明確ではない「カタログギフト」を贈ってみるというのも一つの方法です。
会社や職場への香典返し
会社や職場への香典返しには様々なパターンが想定できますが、いずれの場合でも社会人として常識があるところを見せるためにしっかりとマナーを押さえておくことは非常に大切です。会社から香典を頂いた場合は、まず香典袋の名義を確認してみましょう。
名義が会社名であった場合は会社の慶弔規定に基づいて経費から贈られている可能性があります。このような場合、香典返しは不要です。社長個人からいただいた場合は通常と同じように半返しを目安に香典返しをお返しするのがマナーです。
法人、個人のどちらから頂いたか判断が出来ない場合は総務部などの担当部署の確認しておきましょう。香典返しは本来四十九日の忌明け後に贈るものですが、普段顔を合わせる上司や同僚から香典を頂いた場合、職場を休んで迷惑をかけたお詫びの意味も込めて忌引き明けの出勤時にお渡ししても問題ありません。
社内で直接渡す場合は、
といった気配りも気持ちよく仕事を始めるための大切なマナーと言えるでしょう。
兄弟姉妹や身内へのマナー
一般的には、兄弟姉妹のように近い間柄の身内から香典を頂いた場合も、感謝の気持ちを伝えるために香典返しを贈るのが良いと考えられています。とは言え、近い間柄であれば一般的なマナーだけではなかなか判断できない事もありますよね。
お返しをすべきかどうか、お返しの金額相場はどのくらいにすれば良いか、悩んでしまう方も少なくないかもしれません。身内・家族の間の習慣や、普段のお互いの関係に応じて柔軟に考えることが大切です。
身内である兄弟姉妹や親、祖父母などからの香典は一般的な相場よりも高額になる場合がありますが、このような場合は「今後の遺族のために少しでも役立ててほしい」という気持ちが込められていますので、無理に半返しにこだわらず、可能な範囲でお返しをすれば良いでしょう。
「お返しは必要ない」と言われる場合もあると思いますが、近い間柄の身内であれば素直に言葉通りに受け取っても良いのではないでしょうかただし、いくら近しい身内であっても感謝の気持ちを伝えることは忘れてはいけません。
香典返しの品物ではなくても、落ち着いたらお礼の手紙や電話をかけてみるなど、出来る範囲で感謝の気持ちをお伝えすることは最低限のマナーです。前述のとおり、身内の慣習というものは一般的なマナーで計れるものではありません。
相手がどのような気持ちで香典を包んで下さったかをよく考え、誠心誠意相手の気持ちにお応えすることが大切ですね。
地域別(北海道)
北海道の香典返しは一般的に知られているものとは異なり、葬儀の当日に香典を頂いた方に一律同じ返礼品をお渡しする「即返し」が習慣となっています。北海道ではこの「返礼品」が香典返しにあたります。
「返礼品」には1000円~1500円程度のお茶やお菓子、海苔などが選ばれています。香典返しは半返しが基本と言われている事を考えれば少なく感じますが、「お返しはお互い最小限に」という相互扶助の精神が残る北海道らしい習慣と言えるでしょう。
ただし、高額な香典を頂いた場合や遠方から現金書留で頂いた場合は、後日改めて3分の1~半額程度の品物を贈ります。この場合も四十九日の忌明けを待たず、早めに贈る場合が多いようですね。
地域別(東北)
東北地方の一部の地域では、葬儀の当日にお渡しする会葬御礼品をもって香典返しとする場合があります。つまり、香典返しは贈らないという事ですね。地域によっては香典返しの廃止や香典の額の少額化を推奨している自治体もあり、これらの地域では香典を頂いてもお礼を伝えるだけで済ませる、という事もあります。
ただ、喪主によっては他の地域の方には配慮して、特産品などを贈る方もいらっしゃるようです。もちろん、東北地方と言っても地域によって香典返しの習慣は様々です。このような習慣が全く異なる地域もあるという事を理解しておくのも、お互いが誤解しないための大切なマナーと言えるでしょう。
失敗しないためには地域の習慣に詳しい方や葬儀社の方などに事前に確認しておくといいですね。
地域別(関東)
関東地方の香典返しは、頂いた金額の半額をお返しする「半返し」が基本とされています。また、関東地方では即返しが一般的であるため、頂く香典の相場から、2~3千円の品物を用意し、葬儀の当日に参列者にお渡しすることが多いようです。
頂いた香典の額が高い場合は、合わせて半返しになるように後日改めて品物を贈ります。ただし、この「即返し」の習慣はあくまで葬祭業者やギフト業者が遺族の負担を減らすことを理由に作った習慣だと言われています。
香典返しにかける掛け紙の表書きは「志」、水引は「黒白」が一般的です。香典返しのマナーの地域差は「関東と関西」や「東日本と西日本」のように分けられることが多いのですが、関東地方だけでも地域によって様々なローカルルールが存在します。
弔事のマナーというものはそれほど地域色が強く反映されやすいものだという事でしょう。半返しや当日返しはあくまで関東地方の一般的な傾向であり、同じ関東地方でも習慣が全く違う場合もあるという事を忘れないで下さいね。
地域別(関西)
関西の香典返しでは、掛け紙の表書きや水引の色に特徴があります。香典返しの表書きは「志」とする場合が多いのですが、関西では「満中陰志」とするのが一般的です。満中陰というのは四十九日の忌明けを迎えることで、満中陰志は忌明けに贈る香典返しと同じ意味と考えて問題ありません。
ただし、満中陰は仏教の言葉ですので仏式の葬儀以外では使用できません。どう書けばよいか悩んでしまう場合は、どの宗教にも使える「志」としておくのが無難でしょう。また、水引の色も関西では「黄白の結び切り」が使われる場合があります。
香典返しの相場は「関東は半返し、関西は3分の1返し」と言われてきましたが、関東と関西の距離が近くなっている現代では必ずしも当てはまるとは限りません。都市部を中心に「半返し」の香典返しもよく見られるようになりました。
やはり地域の慣習をよく知る人に確認しておくのが一番確実でしょう。
地域別(九州)
九州の、主に瀬戸内海を囲む地域では、香典返しの表書きを「茶の子」とする場合があります。茶の子とは簡単に言うと「粗品」のような意味を持ち、香典返しの品物だけではなく、会葬御礼品に使用される事もあります。
九州地方の香典返しの相場は半額~3分の1とされていますのが、一部の地域では頂いた香典の額以上にお返しをするという習慣もあるようです。馴染みのない人にとっては驚いてしまう習慣ですが、この辺りは同じ地域でも、故人や故人の家族との付き合いの程度によって大きく変わってくるそうですので一概に地域だけで判断するのは難しいかもしれません。
地域別(東京)
都道府県の中で最も香典返しの金額が高いのが東京都だと言われています。東京は全国から様々な人が集まりますが、地方に比べるとご近所づきあいをはじめとした周囲の人々との付き合いが希薄とも言えるでしょう。
人は付き合いが希薄であるほど、マナーや相場に対して神経質になり、相手に失礼にならないようにと普段以上に気を遣うものかもしれませんね。このようなことからも、東京の香典返しのマナーは「半返し」をはじめとする、一般的に知られている香典返しのマナーがそのまま通用する地域と言ってもいいでしょう。
また、人口の多い東京では葬祭業者が多様化するニーズに合わせて便利なサービスを生み出し続けています。時代の流れに乗って香典返しをはじめとする弔事の習慣がどんどん変化していくのも東京ならではです。
ただ、昔から伝わる習慣を大切にしている人たちもたくさんいらっしゃいます。たとえ常識が変わりつつあっても、昔からのマナーや心遣いを忘れずにいることも大切なのではないでしょうか。
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